もし明日が人生最後の日だとしたら、僕は誰と過ごしたいだろう。
そして、誰に「ありがとう」と伝えたいだろう。
永松茂久さんの著書『君は誰と生きるか』を読みながら、この問いが何度も頭に浮かんだ。
思い浮かんだのは、何か特別な実績を持つ人や、これから出会ってみたい有名な人ではなかった。家族、親友、大学の同期、高校や中学の同級生、Arxcsのメンバー、IPPOのメンバー。いつも一緒にいてくれる人、今も僕と関わり続けてくれている人たちだった。
普段は、その存在を当たり前のように感じてしまう。でも、本当は決して当たり前ではない。
この本は、僕に「新しく誰と出会うか」だけではなく、「今、誰がそばにいてくれているか」を見つめ直す時間をくれた。
人脈は、広ければ広いほどいいのか
この本は、著者である「僕」と「師匠」の対話を通して、人間関係の本質を問いかける一冊だ。
SNSが広がり、僕たちはフォロワーや知り合いの数によって、人とのつながりを測りやすくなった。多くの人と知り合うことや、影響力のある人とつながることが、人生を豊かにしてくれるように感じることもある。
もちろん、新しい出会いは大切だ。僕自身も、さまざまな活動を通して多くの人と出会い、そのご縁に助けられてきた。
しかし、本書が問いかけるのは、その数を増やし続ける先に、本当に求めているものがあるのかということだ。
出会いを無理に広げる前に、すでにそばにいる人を大切にできているだろうか。人脈の数を求めるあまり、身近な人への感謝を忘れてはいないだろうか。
読み進める中で、僕は「人脈の広さ」よりも、「心から信頼できる人との深さ」を大切にしたいと思った。
「何をするか」より、「誰とするか」
僕は今、農業、教育、サッカー、コミュニティづくりなど、いくつもの活動に関わっている。
活動の目的や内容は、もちろん大切だ。どれほど社会的に意義があるのか。誰のどんな課題を解決できるのか。継続できる仕組みになっているのか。事業として考えなければならないことはたくさんある。
けれど、どれほど立派な目的を掲げていても、一緒に進む人との間に信頼がなければ、長く続けることは難しい。
反対に、互いを信頼し、同じ方向を見ながら支え合える人たちとなら、難しい状況でも前に進めることがある。
僕が一緒に生きたい、一緒に仕事をしたいと思うのは、人のために行動できる人だ。自分が与えたものに対して、すぐに見返りを求めるのではなく、目の前の人のために自然と動ける人。そんな人たちと一緒に、誰かの夢への一歩を支えていきたい。
そして、僕自身も周囲から信頼してもらえる人でありたい。そのために、言葉だけで思いを語るのではなく、人のために行動できる自分でいたいと思う。
うつ病になって気づいた、そばにいることの力
僕が人とのつながりの大切さを強く感じたのは、自分がうつ病になったときだった。
心身に余裕がなくなり、これまでのように動くことができない。自分では頑張りたいと思っていても、心や体がついてこない。そんな時期に僕を支えてくれたのは、家族、友人、仲間だった。
みんなは、無理に僕を励まそうとはしなかった。
答えを出そうとしたり、「もっと頑張れ」と前へ押し出したりするのではなく、ただそばにいてくれた。話を聞き、僕の状態を受け止め、関わり続けてくれた。
その存在に、僕は救われた。心が少し楽になった。
以前の僕は、人を支えるとは、励ましたり、正しい答えを伝えたり、問題を解決したりすることだと思っていた部分があった。しかし、自分が支えられる側になって初めて、何かを言うことだけが支援ではないと気づいた。
励ますより、そばにいる。答えを伝えるより、話を聴く。相手を変えようとするより、今の状態を受け止める。そして、支える側も無理をしすぎず、長く関わり続ける。
誰かにとって安心できる存在になるために必要なのは、特別な言葉ではないのかもしれない。
「ここにいていい」と感じてもらえる関わりを続けること。それ自体が、人を支える大きな力になるのだと思う。
人を大切にすることと、自分を犠牲にすることは違う
一方で、僕には、人を大切にしようとするあまり、頼まれたことを断れないところがある。
誰かに頼られると、力になりたいと思う。期待に応えたい気持ちもある。その結果、引き受けることが増え、自分の時間がなくなり、心の余裕まで失ってしまうことがあった。
人のために行動することは、僕がこれからも大切にしたい価値観だ。しかし、人のために動くことと、自分を犠牲にすることは同じではない。
自分に余裕がなくなれば、目の前の人に丁寧に向き合うことも難しくなる。すべての頼みを引き受けることが、必ずしも相手のためになるとは限らない。
これから何かを頼まれたときは、まず自分の時間や状態を考えたい。そのうえで、引き受けることが本当に相手のためになるのかを考えて、行動を選びたいと思う。
断ることは、その人を大切にしていないという意味ではない。無理なときは正直に伝えることも、信頼関係を長く続けるために必要なことだと思う。
「ここが自分の居場所だ」と思える場所をつくる
僕には、「日本人の自殺者をゼロにする」という目標がある。
とても大きな目標で、簡単に実現できるものではない。それでも、僕は自分が取り組んでいる農業、教育、サッカーを通して、その未来に少しずつ近づきたいと思っている。
農業では、人と人が自然につながれる農業イベントを開催し、お米の一般販売を通して関係を広げていく。
教育では、フリースクールを開校し、不登校の子どもたちを支える。学校に行けないことだけを見るのではなく、その子が安心して過ごし、自分らしい一歩を見つけられる環境をつくる。
オンラインサッカー塾では、技術だけでなく、挑戦を続けるためのメンタリティも伝えていく。うまくいかないときにも、自分の価値まで否定せず、また前を向けるような関わりをしていきたい。
活動の形はそれぞれ違う。しかし、根底にある思いは同じだ。
関わってくれる人に、「自分の居場所はここなんだ」と思ってもらえる場所をつくりたい。
居場所は、建物やサービスを用意するだけでは生まれない。そこにいる人が話を聴き、受け止め、関わり続けることで、初めて安心できる居場所になる。
だからこそ、僕は「何をつくるか」と同じくらい、「誰とつくるか」を大切にしたい。人のために行動できる仲間と、互いに無理をしすぎず、長く続けられる形をつくっていきたい。
伝えられるうちに、「ありがとう」を伝える
『君は誰と生きるか』を読んで、僕は新しい出会いを求める前に、今ある関係をもう一度大切にしたいと思った。
Arxcsのメンバー、IPPOのメンバー、家族、親友、大学の同期、高校の同期、中学の同期。
いつも一緒にいてくれること。関わり続けてくれること。その一つひとつに、心から感謝している。
近くにいる人ほど、感謝は後回しになりやすい。「言わなくても伝わっている」と思ってしまう。でも、心の中で思っているだけでは、届かないこともある。
だから、僕が最初に実行したいのは、支えてくれた人たちに感謝を伝えることだ。
これまで一緒にいてくれて、ありがとう。
今も関わり続けてくれて、ありがとう。
苦しいとき、無理に励まさず、そばにいてくれて、ありがとう。
出会いの数が多いことよりも、目の前の一人を大切にできること。何を成し遂げるかだけでなく、誰と生き、誰と働くかを考えること。そして、人のために行動しながら、自分の時間や心も大切にすること。
この本を通して、僕はそんな生き方をしていきたいと思った。
もし、明日が最後の日だとしたら、あなたは誰と過ごしたいですか。
そして、誰に「ありがとう」を伝えたいですか。
その人が思い浮かんだなら、伝えられるうちに伝えてみてほしい。
新しい出会いを探す前に、まず、今そばにいてくれる人へ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
話を聴かせてください
うつ病・精神疾患で悩んでいる方、人に頼れずに抱え込んでいる方の相談を受け付けています。オンライン対応・無料。経験者としての対話であり、医療行為・専門的カウンセリングではありません。
この記事は個人の考えをまとめたものであり、医学的な助言ではありません。心身の不調が続く場合は医療機関にご相談ください。今つらい状態にある方は、#いのちSOS(0120-061-338/24時間)やよりそいホットライン(0120-279-338/24時間)など、専門の窓口にご連絡ください。